主要ゴムについて
天然ゴム(NR)
その名の通り、天然のゴムの木から採取された樹液を主成分としたゴムです。黒色をしているのは、強度を増すためにカーボンブラックが添加されているためです。
一番安価なゴムシートで、汎用ゴムとして敷物や緩衝材に使用されています。
油に対して弱い、耐候性が弱い(屋外での使用時、ダメージが蓄積してひび割れが起きたりする)などの欠点があります。
安価ながら弾性、及び機械的強度が高いため、タイヤやコンベアベルトとして使用される材質でもあります。(その場合は補強のために様々な補助剤が使われているようです)
クロロプレンゴム(CR)
物性のバランスが非常に優れた合成ゴムです。それぞれを専門とする他のゴムには劣りますが、機械的強度・耐候性・耐薬品性・耐熱性・耐寒性・耐油性に優れています。
1930年台に登場してから、工業用途に長年利用されてきた実績があります。
合成ゴム、と言えば一般的にはクロロプレンゴムのことで、迷ったらコレ!です。
低温時(−40度)に結晶化してしまう欠点があります。
ニトリルゴム(NBR)
ニトリルゴムは耐油性の高い合成ゴムです。ニトリルゴムはゴムの分子鎖中に極性基(シアノ基)を持つため、極性の低い油に対して耐性を持ちます。 オイルが多く使われる自動車関係や、油圧パッキンなどに使用されています。
一方で、極性を多分に持つため、ゴムの特性である電気絶縁性はやや低いです。
また、天然ゴムと同じく耐候性に劣ります。
エチレンプロピレンゴム(EPDM)
屋外使用に適した合成ゴムです。一般にゴムは分子鎖中に反応性の高い二重結合を有するため、紫外線やオゾンにさらされると主鎖の断裂等が生じ劣化します。
それに対し、EPDMは主鎖中に二重結合が少ないため、紫外線やオゾンに対して耐性を持ちます。
更にEPDMには酸化防止剤や老化防止剤等の添加剤を多く加えて耐候性を高めてあります。
そのため、添加剤の成分が表面に浮き出て、白い膜が張るブルームやブリードと呼ばれる現象が起こりやすいという面もあります。
なお、極性が小さいために、油には弱いです。
代表的な合成ゴムの中では最も比重が小さく、軽いゴムといえます。
ブチルゴム(IIR)
分子構造の中に二重結合が少なく化学的に安定しているので、耐熱性が高く(120℃〜130℃)、耐候性にも優れた合成ゴムです。また、分子構造中のメチル基の立体障害により、気体を透過させにくくガスバリア性が高いため、 ゴムチューブ等にも使用されるゴムです。
また、振動を減衰させやすい性質があり、防振ゴムの用途にも使われます。
ウレタンゴム
分子鎖内にウレタン結合を持ったゴム状の高分子材料です。他のゴムと同じ弾性体でありながら、非常に優れた力学的強度を持ちます。
耐摩耗性が優秀で、引裂きにも強く、耐荷重性が高いです。
工業用ロール、ベルト、高圧パッキン、カップリングなど強い力のかかる用途に使用されます。
工業用のウレタンゴムはエステル系とエーテル系の二種があり、物性が異なります。
エステル系は加水分解されやすいですが、耐油性が良好です。
エーテル系は耐油性に劣りますが、耐加水分解性、耐寒性にすぐれています。
シリコーンゴム
天然ゴム、CRゴム等の一般的なゴムの主鎖が炭素(C)と炭素(C)の結合で形成されているのに対し、シリコンゴムはケイ素(Si)と酸素(O)の結合でできています。結合エネルギーが大きいため、耐熱性に優れ(180℃〜200℃)、耐候性も良好です。ただし蒸気に弱い点には注意が必要です。
また、分子運動が活発なので、耐寒性に優れています。(-70℃〜-120℃)
他のゴムと比べて気体透過性が格段に高いのも大きな特徴で、ガス透過膜としての用途もあります。
また、構造中に炭化水素基が少ないので難燃性が高く、透明度があります。
当店で取り扱っているシリコンゴムシートは食品衛生法をクリアしています。
電気、電子関係の各種部品、食品関連機器部品などに使用されています。
ただし、引裂き強さ、耐磨耗性などの力学的性質が他のゴムと比較すると劣ります。
フッ素ゴム
炭素骨格にフッ素が付加した構造のゴムです。炭素(C)─フッ素(F)結合の化学的安定性が高いこと、またフッ素原子が立体障害となり炭素骨格が外部からの攻撃を受けにくいこと等により、 フッ素ゴムの物性は他の合成ゴムに比べて極めて優秀です。
耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐炎性、耐候性、耐オゾン性などは、他のゴムと比べて群を抜いています。
非常に優れたフッ素ゴムですが、ガラス転移温度が約マイナス20度と高めで、寒いところでの使用には不向きです。
フッ素を含んだ樹脂(ゴムと金属の中間のような物質)であるテフロン(PTFE)も、合成樹脂の中で格別に優秀で、 高い耐薬品性、耐熱性に加え摩擦係数が非常に低いといった特性を持ちます。