特性用語について
機械的強度
機械的強度とはゴムの物理的な強さを意味します。主なものとして、引張り強さ、反発弾性率、引裂き強さ、耐摩耗性、圧縮永久歪みなどが、各種ゴムの強度比較に用いられます。
引張り強さとはゴムを両サイドに引っ張っていき、破断した時点での応力と伸びの値です。引っ張りに対する強さと伸びやすさがわかります。
反発弾性率とはゴムを落下させたときの跳ね返りの割合です。値が大きいほど、反発が強いことを意味します。
引裂き強さの試験ではゴムを引き裂くのに必要とされる力を測定します。値が大きいほど引裂きにくいことを意味します。
耐摩耗性とは、摩擦に対するゴム表面の削られにくさ、すり減りにくさのことです。
圧縮永久歪みの試験では、ゴムを一定時間圧縮変形し、その後に圧縮する力から開放した時に、ゴムにどれほど歪みが残るかを測定します。圧縮永久歪みが小さいほど復元する力が強く、長くへたらないゴムと言えます。圧縮され復元の力でシールの役目を担うゴムパッキンにとって、圧縮永久歪みは重要な要素です。
耐熱性
耐熱性とは熱に強いかどうかを示す指標であり、使用限界温度の目安です。使用限界温度を越えると、分子の回転や振動がはげしくなり、ゴム分子の主鎖である炭素(C)─炭素(C)結合の断裂などが生じ、ゴムはその特性を失います。 一般に、化学的安定性の低い二重結合を多く含むゴムは耐熱性が低く、二重結合が少ないゴムは耐熱性が高くなります。
ゴムの耐熱性はNR、ウレタン<CR、NBR<EPT、ブチル<シリコンゴム<フッ素ゴムの順に高くなります。
フッ素ゴムは、炭素(C)─フッ素(F)結合の結合エネルギーが大きいこと、また構造上主鎖が回転しにくいことにより非常に優れた耐熱性を有します。
また、シリコンゴム中のケイ素(Si)─酸素(O)結合は炭素(C)─炭素(C)結合よりも結合エネルギーが大きいため、シリコンゴムも優れた耐熱性を有します。
耐薬品性 →耐薬品リスト
耐薬品性とは、酸、アルカリ、その他化学薬品に接触する用途への使用可否の目安です。対象となる薬品の種類が多く、一括りにどのゴムが薬品に対して強いと言い切ることはできませんが、対応する薬品の数が多いものほど耐薬品性が高いゴムと表現しています。
使用前に対象とする薬品に対して耐性があるかの確認が必要となります。
耐候性
耐候性とは屋外使用に適しているか否かの目安です。屋外での使用に際し、ゴムの敵となるのは主に紫外線とオゾンです。
ゴムの長い分子鎖は、紫外線のダメージを受けると断裂してしまいます。
また、大気中に存在するオゾンは紫外線によって分解されると酸素原子を放出します。
この酸素原子がゴムにアタックすると酸化反応が生じ、ゴムは劣化します。
ゴムの構造で紫外線と酸素原子に狙われるのは、結合の安定性が比較的低い二重結合の部分です。
そのため、二重結合の少ない合成ゴムが、耐候性に優れていると言えます。
耐候性に優れた代表的な合成ゴムはエチレンプロピレンゴム(EPDM)です。
また、クロロプレンゴム(CR)も敷ゴム等の一般的な用途であれば十分な耐候性を有します。
耐寒性
耐寒性とは低温環境で使用できるかどうかの目安です。それぞれの材質に固有のガラス転移温度を下回ると、ゴム中の分子運動が非常に遅くなり、ゴムはその特徴である弾性を失います。
代表的な耐寒性ゴムであるシリコンゴムは、低温でも分子運動が活発なため、−70℃〜−120℃程度まで弾性を保持します。
また、天然ゴム(NR)も比較的耐寒性が良好で、−40℃程度まで弾性を失いません。
耐油性
耐油性とは、油に接する用途での使用可否の目安です。耐油性の低いゴムは、油に浸しておくと油を吸って膨張してしまいます。
一般的に油は極性を持たないため、ニトリルゴム(NBR)などの分子鎖中に極性基を多く有するゴムは油となじみにくく耐油性が良好です。
ただし、中には極性を持つ油(難燃性作動油やブレーキ油など)もあるため、使用の際には確認が必要です。